長命茂宏税理士事務所
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2020/8/23

生活に通常必要な資産の譲渡の非課税について

 先日長年使っていた衣類収納ボックスをリサイクルショップに引き取ってもらいに行きました。タダでもいいやと思っていたものの、意外にも数百円になったので、宵越しのお金は持たぬと威勢よく、近くのホームセンターで前から気になっていたコロナ対策用のフェイスシールドの購入費に充てました。
 
 フェイスシールドのお話は余談で、衣類収納ボックスの話に戻るのですが、所得税法9条1項9号で、一定の資産の譲渡の非課税が規定されています。具体的には、一定の資産の譲渡の非課税とは、自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供する家具、什器、衣服、その他の資産で政令で定めるものの譲渡による所得について非課税ということを意味します。これを、一般的に、生活に通常必要な資産の譲渡の非課税といいます。(ここでいう資産は動産を指しています。)
 
 また、ここでいう政令とは、所得税法施行令25条のことを指しています。具体的には、上記法9条に加え、生活に通常必要な動産のうち、宝石等、書画、骨とう品、美術工芸品で、一個又は一組の時価相当額が30万円以下のものの譲渡についても非課税である旨が規定されています。
 
 よって、所得税法上の生活に通常必要な資産を判断する際、主にこの法9条と令25条がクローズアップされます。(ちなみに、反復継続して売却しているなど事業性が高いと判断されたら、上記非課税規定ではなく、事業所得や雑所得に該当するケースもでてくると思いますが、ここでは反復継続していない、たまに売っただけのケースを前提に言及しています。)
 
 税法勉強したての若かりし頃、そうか、家財等を高く売って譲渡益が出ても、生活に通常必要な資産の譲渡であるなら、非課税になるんだ、太っ腹な規定じゃん、って一瞬思ったこともありました。
 
 でも、この規定って、譲渡益が出ても非課税でいいよの代わりに、逆に譲渡損が出ても、ないものとみなされちゃうんです。つまり、この譲渡損が出ても、例えば、他の動産など(総合譲渡)の譲渡益などと相殺できないんです。
 
 使い古した家財って、通常そんなに高く売れないですよね。なので、大抵は譲渡損のケースが多いような気がします。(ものによっては減価償却費を考慮して、まれに益になるケースもあるかもしれませんが。)
 
 ですので、以前から感じていたことですが、この規定が100%太っ腹かというとそうとも限らないよなと、衣類収納ケースの査定を待つ間改めて考えていました。同じ映画なのに、1度目観たときより、時間をおいて2度目観たときのほうが色々気づく点があるのと同じように、同じ条文なのに、若かりし頃感じたものの見方と、実務を経て再度読み返したときに感じるものの見方が違うのは非常に興味深いです。
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