長命茂宏税理士事務所
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2020/6/11

第一次相続 と 第二次相続 にみる、相続税の計算構造

 一時自粛ムードで不動産屋さんの広告が減ったなと思っていたのも束の間、緊急事態宣言解除後、また堰を切ったかのように不動産屋さんの広告物がポスティングされていて、片付けるのが大変だなと思いつつ、一方で、こういったところに日常が戻りつつあるのを少し実感していますが、あれれ、何やら見慣れない広告物が・・。
 
 他県の税理士事務所からで、相続のお客様を紹介してほしい旨の広告物でした。いやいやウチも税理士事務所なのですが・・。私個人名宛で来てるのかなと思いきや、税理士事務所宛で来てました。税理士事務所から税理士事務所へ。B to B ならぬ、 Z to Z 。マーケティング手法って色々あるものだなと思いました。
 
 そんなこんなで相続、とりわけ、いつか書こうと思っていた、第一次相続と第二次相続について言及します。
 第一次相続とは、両親のうち片方が亡くなり、もう片方(つまり配偶者)と子が相続人になる場合の相続を指し、第二次相続とは、第一次相続後残された配偶者が亡くなり、子が相続人となる場合の相続を指します。ここでは、夫が亡くなり、妻と一人っ子による第一次相続と、残された妻が亡くなり、一人っ子による第二次相続を前提にご説明します。
 
 その前に、相続税の計算方法は、おおまかに言うと、
 ①まず、亡くなった方(夫)の全部の財産・債務を把握・集計します。
 ②次に①をもとに、全体の相続税額を算出します。
 ③そして、全体の相続税額を、相続人の遺産取り分に応じて、按分します。
 ④按分によって、相続人ごとの税額を算出したら、配偶者の税額軽減や、未成年者控除など、相続人の特性に応じて認められている一定の控除額を、その算出税額から控除して、各人の納付税額を計算します。(このケースは算出税額から控除だけですが、相続人が兄弟姉妹の場合などは、逆に加算のケースもあります。)
 
 なお、この配偶者の税額軽減とは、最低でも、課税価格1億6千万円までは、配偶者には課税しないという制度です。(課税価格とは、税額ではなく、平たく言うと、相続財産に一定額加減したものです。細かい定義をいうと、課税価格=本来の財産+みなし相続財産+相続開始前3年以内の贈与財産+相続時精算課税制度による贈与財産-非課税財産-債務・葬式費用・・・と長たらしく、小規模宅地等の減額も考慮するので、必ずしも課税価格と相続財産は一致しません。とはいえ定義で考えると複雑になるので、便宜的に平たい方でイメージしていただければと。また、配偶者の課税価格のうち、A課税価格1億6000万円、B課税価格の合計×配偶者法定相続分を比較してABいづれか大きい額まで配偶者の税額軽減の適用が可能なのですが、やはり長たらしいので、最低でも、課税価格1億6千万円のほうがイメージしやすいかと。)
 
 では、夫が亡くなり、第一次相続において、基礎控除額は超えるが、1億6000万円も相続財産は無いといった場合、妻が相続財産を全部取得して、配偶者の税額軽減を適用して、相続税額をゼロにするという方法が税負担面において絶対にいいかというと、そうとも限りません。
 
 以下は相続税の速算表(平成27年1月1日以降の相続又は遺贈)です。
 
法定相続分に応ずる取得金額
   税率   
   控除額  
      1,000万円以下    10%    -
      3,000万円以下    15%    50万円
      5,000万円以下    20%    200万円
      1億円以下    30%    700万円
      2億円以下    40%  1,700万円
      3億円以下    45%  2,700万円
      6億円以下    50%  4,200万円
      6億円超    55%  7,200万円
 
  ※以下9行は、こまい話なので、とばし読みしても大丈夫です。
 法定相続分に応ずる取得金額について、上記②相続税の総額計算とも、話は関連するのですが、まず課税価格の合計額から基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を控除して課税遺産総額を求めます。次に、実際の遺産の分け方とは無関係に便宜的に、課税遺産総額に法定相続分を乗じます。このケースの第一次相続の場合は、法定相続分、妻1/2、一人っ子1/2です。法定相続分を乗じて出てきた金額を、それぞれ上記速算表に当てはめて税額計算し、最後にこの両者の分を足し算して相続税の総額を算出します。このケースの第二次相続の場合は、法定相続分は、一人っ子のみの100%なので、課税価格が基礎控除額を超えているならば、法定相続分を乗じるまでもなく、課税遺産総額に、いきなり速算表を当てはめて税額計算することになります。
 
 速算表見ても分かるように、税率は一律ではなく、法定相続分に応ずる取得金額が大きくなるごとに、税率も大きくなっています。(法定相続人の人数が少なければ少ないほど、遺産が多ければ多いほど税率も大きくなります。)また、このケースの法定相続人の数は、第一次相続2人→第二次相続1人であり、基礎控除額も減ります。
 
 ということは、第一次相続で妻が全部相続・配偶者税額軽減適用で相続税額ゼロで申告しても、例えば、夫の遺産をほとんど使わずに妻が亡くなり、第二次相続で妻の遺産(=夫の遺産の残り+妻固有の財産)を子が全部相続した際に、一気にドカッと大きな税率で計算した相続税額が発生する場合があります。
 
 ですから、第一次相続で多少子に相続税が発生したとしても、妻と子に分散して相続させたほうが、結果的に、第一次相続と第二次相続の合計の相続税額をトータルで考えた場合、低く抑えられる場合がございます。
 
 もちろん、第一次相続後、妻が長生きし、夫の遺産を生活費等で散財し、妻固有の財産もあまり無いといった場合、やはり話が最初に戻って、第一次相続で妻が全部相続・配偶者税額軽減適用したほうが一次二次トータルで考えても税額が低く抑えられる場合もございますし、そもそも相続は、相続人同士の話合いや遺言で遺産を分けるのが第一であって、上記一次二次の税負担予測はあくまで一つの参考です。
 
 相続税の仕組みや全体像がイメージできると、相続について、また少し違った見方が可能になったり深みが増すかなと思い記載しました。すべての相続人様の何かの一助になれば幸いです。
 
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