長命茂宏税理士事務所
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2020/5/25

手形交換所の取引停止処分 と 貸倒引当金(個別評価)の繰入 の関係。

 先月ニュースにて、金融庁・日本銀行は、全国の手形交換所に対して、コロナ問題の影響を考慮して、手形や小切手の不渡りについて、不渡報告への掲載・取引停止処分を猶予するようお達しを出すと報道されていました。(注:掲載・処分の猶予であって、支払の猶予ではない。)
 
 取引停止処分とは、手形や小切手の不渡りを、同一手形交換所内で半年以内に2回起こした場合の、手形交換所による処分のことです。具体的には、各金融機関に報告がされ、2年間当座取引等が停止になるという流れ。なので、この処分の猶予の話です。
 
 以前ブログで貸倒損失について言及しましたが、これと似ているものに貸倒引当金繰入というものがあります。貸倒引当金繰入とは、売掛金や受取手形などの債権について、まだ貸し倒れていないけど将来貸し倒れるかもしれないので、一定要件のもと、費用として引当金を任意計上することを言います。(税法上、ケースごとに繰入額に限度がございます。)
 
 ちなみに、税法上繰入が認められている法人は、期末資本金1億円以下の中小企業(下記Aを除く)とその他一定の法人です。
 ※Aとは、期末資本金5億円以上の大法人等による直接または間接の完全支配関係がある法人などを指します。なので、一例挙げますと、大法人等にa株100%持たれてる中小法人aが典型的なAです。なお、その他一定の法人の中には、結構色々な法人が含まれており、全部列挙すると長くなるので省略している点ご了承ください。
 
  この貸倒引当金には、一括評価と個別評価の2種類があります。前者は一般的なもの、後者は特別なもの、言い換えれば前者に比べ後者の方が貸し倒れリスクが高いものとも言えます。今回フォーカスしたいのは、後者の個別評価の貸倒引当金です。
 
 ようやく冒頭の話とリンクしますが、①債務者から受け取った手形が期中に手形交換所の取引停止処分を受けた場合、あるいは、②債務者の振り出した手形が事業年度末までに不渡りとなり、確定申告書の提出期限までに手形交換所の取引停止処分を受けている場合には、金銭債権のうち、上記事由が生じているもの(取立等見込額控除後)の額の50%を、個別評価の貸倒引当金として繰り入れることができます。貸し倒れのリスクが高いので繰入額も50%と高いです。(個別評価の貸倒引当金を繰入できるケースは他にもいくつかありますが、ここでは手形交換所の取引停止処分のケースだけ言及。)
 
 しかし、取引停止処分が猶予されるということは、たとえ半年以内に2度不渡りとなっても、まだ処分がされないため、従来とは異なり、猶予されている間は、債権者側で個別評価の貸倒引当金を繰り入れることはやはり難しいということでしょうか。そもそも猶予はいつまでなのでしょう。税務のこと以上に、債権者が債務者の状況を正確に把握するのが遅れて負の連鎖が起こったりしないか、また、処分猶予するのであれば、それとセットで迅速な融資もするなど手立ては整っているのだろうかと考えてしまう次第です。結局問題提起ばかりであまり結論になってなくて恐縮です。
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